レーザーテック 2026年6月期第3四半期決算を読む ― 営業減益でも経常増益、その分かれ目はどこか

決算分析

半導体関連検査装置を手がけるレーザーテックが、2026年6月期第3四半期の決算を発表しました。第3四半期累計の売上高は1,695億円と前年同期からほぼ横ばい、営業利益は781億円と微減でしたが、経常利益・親会社株主に帰属する四半期純利益はいずれも増益となりました。

本記事では、営業利益が前年を下回ったにもかかわらず経常利益以下が増益となった理由を、為替差損益の動きと販管費の増加に分けて読み解きます。あわせて、利益とキャッシュ・フローのズレ、装置とサービスの売上構成の変化についても確認していきます。

投資判断を示すものではなく、公表資料に基づく客観的な分析です。

業績サマリー

項目当期前年同期前年同期比・増減
売上高1,695億円1,688億円+0.4%
営業利益781億円792億円▲1.4%
営業利益率46.1%47.0%▲0.9pt
経常利益804億円753億円+6.7%
親会社株主に帰属する四半期純利益568億円526億円+7.8%
EPS(1株当たり四半期純利益)632.49円584.27円+48.22円

数字の動き

第3四半期連結累計期間の売上高は1,695億円で、前年同期の1,688億円からほぼ横ばいの+0.4%となりました。品目別の販売実績を見ると、半導体関連装置が前年同期比▲6.7%、その他が▲33.3%と減少した一方、サービスは+35.5%と伸びています。装置売上が減少する一方で、サービス売上の増加により、全体の売上高は前年同期並みを維持しました。

会社は、主要販売先である半導体業界について、AIへの投資拡大を背景にGPUやHBMなど先端半導体への需要が継続し、デバイスメーカーの設備投資に対する積極的な姿勢が続いたと説明しています。

営業利益は781億円で、前年同期の792億円から▲1.4%の微減となりました。売上高がほぼ横ばいであった一方、売上原価は前年同期の720億円から701億円へ減少し、売上総利益は968億円から994億円へ増加しています。ただし、販売費及び一般管理費も175億円から212億円へ増加しており、売上総利益の増加分を販管費の増加が上回った結果、営業利益は前年同期をわずかに下回りました。

営業利益率は46.1%で、前年同期の47.0%から▲0.9pt低下しています。

経常利益は804億円で前年同期比+6.7%、親会社株主に帰属する四半期純利益は568億円で同+7.8%となりました。営業利益が微減であった一方で経常利益以下が増益となった背景には、営業外損益の変動があります。

前年同期は営業外費用として為替差損40億円が計上されていましたが、当期は営業外収益として為替差益17億円が計上されています。その結果、営業外収益合計は2億円から22億円へ増加し、営業外費用合計は41億円から0億円台へ減少しました。

公認会計士の視点

今回の決算で最も注意したいのは、営業利益と経常利益・純利益で見え方が異なる点です。

第3四半期累計では、売上高は前年同期比+0.4%とほぼ横ばい、営業利益は▲1.4%の微減でした。一方で、経常利益は+6.7%、親会社株主に帰属する四半期純利益は+7.8%と増益になっています。

この違いは、営業外損益の変動にあります。前年同期は営業外費用として為替差損40億円が計上されていましたが、当期は営業外収益として為替差益17億円が計上されています。為替差損益だけで見ると、前年同期から当期にかけて約58億円のプラス方向の振れがありました。

そのため、今回の経常利益・純利益の増益を、そのまま本業の営業力の改善と見るのはやや早いと考えます。営業段階では、売上高はほぼ横ばいで、営業利益は小幅に減少しています。一方で、経常利益以下では、為替差損益の反転が利益を押し上げています。つまり、PLを見るうえでは、「本業の営業段階」と「為替を含む営業外段階」を分けて読む必要があります。

ただし、営業利益が減っているからといって、単純に本業が弱くなったと断定するのも早計です。売上総利益は前年同期の968億円から当期は994億円へ増加しています。売上総利益率も、計算値では前年同期の57.3%から当期は58.6%へ上昇しています。一方で、販売費及び一般管理費が175億円から212億円へ増加したため、売上総利益の増加分を販管費の増加が上回り、営業利益は前年同期をわずかに下回りました。

ここで重要なのは、粗利段階と販管費段階を分けることです。粗利率は改善していますが、販管費の増加により、営業利益率は前年同期の47.0%から当期46.1%へ低下しています。営業利益率の低下だけを見ると収益性が悪化したように見えますが、粗利率はむしろ上昇しているため、営業段階の中身はもう一段分解して見る必要があります。

ただし、四半期短信だけでは、販管費の増加が人件費、研究開発費、賞与関連費用、その他のどの費目によるものかまでは切り分けられません。貸借対照表では賞与引当金の増加は確認できますが、それを販管費増加の主因と断定することはできません。ここは、資料上確認できる範囲と、確認できない範囲を分けておきたいところです。

もう一つ確認したいのが、利益とキャッシュ・フローのズレです。親会社株主に帰属する四半期純利益は増益でしたが、営業キャッシュ・フローは前年同期の445億円から当期は368億円へ減少しています。

この営業キャッシュ・フローの減少は、単純に利益の質が悪化したというより、運転資本と税金支払のタイミングによる影響が大きいと見ます。特に前受金は、前年同期には増加要因でしたが、当期は減少要因となっています。また、法人税等の支払額も前年同期より大きく増加しています。

前受金の減少は、過去に受け取った前受金が売上計上に伴って取り崩された動きとも読めます。一方で、前受金は受注や契約の進捗とも関係するため、新規の前受金がどの程度積み上がっているかは今後も確認したい点です。会社は説明会で受注見通しを上方修正していますが、四半期ごとの受注額は開示していないため、前受金の増減だけで受注環境を断定することはできません。

品目別では、半導体関連装置が前年同期比で減少する一方、サービスは大きく増加しています。装置売上は納入タイミングの影響を受けやすい一方、サービスは既存装置の稼働や保守需要に支えられる面があります。今回の決算では、サービス売上の増加が全体売上を下支えした形です。

もっとも、サービス収入は既存装置の累積稼働に支えられる面があるため、将来の装置受注が鈍れば中長期の伸びにも影響しうる点は、過大評価を避ける意味で留意が必要です。レーザーテックは単一セグメント開示であり、装置の機種別売上やサービスの詳細内訳までは短信からは読み取れません。

今回の決算は、表面的には「営業利益は微減、経常利益・純利益は増益」という形です。ただ、その中身を見ると、粗利率は改善している一方で販管費が増加し、さらに為替差損益の反転が経常利益以下を押し上げています。したがって、見るべきポイントは、単純な増益・減益ではなく、「営業段階の収益力」「営業外損益の影響」「キャッシュ・フローとのズレ」を分けて確認することだと考えます。

注目点・今後の論点

第一に、受注の回復が今後の装置売上にどう結びついていくかです。会社は決算説明会で、今期の受注額見通しを従来の1,700億〜2,200億円から2,000億〜2,400億円へ引き上げたと説明しています。

新型のマスク欠陥検査装置であるACTIS A200HiTを複数台受注したほか、MATRICSやブランクス関連も強含みで推移していると説明しています。ただし、会社は四半期ごとの受注額を開示しておらず、詳細までは開示していないとも回答しています。受注は装置売上に先行する指標であるため、足元の売上が横ばいであっても、この受注見通しが来期以降の装置売上にどう表れてくるかは、引き続き確認したい点です。

第二に、前受金とサービス売上の推移です。当期は前受金が減少し、これが営業キャッシュ・フローの減少要因の一つとなりました。前受金は受注や契約の進捗とも関係するため、過去の受注残の消化が進んでいるのか、新規の前受金の積み上がりがどの程度かを、次の四半期以降も見ておきたいところです。

あわせて、今回全体売上を下支えしたサービス売上が、装置の累積稼働を背景に伸びを続けるのかも注目点です。

第三に、為替前提と利益の関係です。今回は為替差損益の反転が経常利益以下を押し上げましたが、為替差損益は期末日のレートに左右される営業外の要因であり、毎期同じ方向に出るとは限りません。

会社は決算説明会で、第4四半期の想定為替レートを1ドル155円に修正したものの、売上へのインパクトは小さく通期業績予想に変更はないと説明しています。今後、為替の振れが利益にどう影響するかは、営業段階の実力とは分けて見ておく必要があります。

まとめ

レーザーテックの2026年6月期第3四半期は、売上高がほぼ横ばい、営業利益は微減という結果でした。一方で経常利益・純利益が増益となった背景には、為替差損益が前年の損失から当期の利益へ反転したことがあります。表面的な増益・減益の数字だけでなく、営業段階と営業外段階を分けて読むことが、今回の決算を理解するうえでの要点といえます。

営業段階の中でも、粗利率は改善している一方で販管費が増加しており、営業利益率の低下だけを見て収益性が悪化したと判断するのは早計です。また、純利益は増益でしたが営業キャッシュ・フローは減少しており、これは運転資本と税金支払のタイミングによる影響が大きいと見られます。

次の決算で見ておきたいのは、受注見通しの上方修正が装置売上の回復として表れてくるか、前受金とサービス売上がどう推移するか、そして為替の振れが利益にどう影響するか、という点です。いずれも、本業の営業段階の実力と、営業外の為替要因とを切り分けながら確認していきたいところです。

出典:レーザーテック株式会社 2026年6月期 第3四半期決算短信、2026年6月期 第3四半期決算説明資料

※本記事は、公表資料に基づく客観的な情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。詳しくは免責事項をご確認ください。

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