メルカリの2026年6月期第3四半期累計は、売上収益が前年同期比16.1%増の1,672.91億円、営業利益が同69.7%増の345.18億円となり、営業利益率は14.1%から20.6%へ上昇しました。増収率を大きく上回る増益となり、第3四半期累計として利益率の上昇が目立つ決算です。
本記事では、この利益率の上昇をどこまで構造的な収益力改善と読めるのかを軸に、決算を読み解きます。会社は3Qに大型のマーケティング施策がなく、4Qに投資が集中すると説明しており、単四半期の高い利益率をそのまま実力値と見てよいのかが論点になります。あわせて、Fintechの債権残高拡大とキャッシュ・フローの動きについても、公認会計士の視点から確認します。
業績サマリー
| 科目 | 当第3四半期累計 | 前年同期 | 前年同期比・増減 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1,672.91億円 | 1,440.67億円 | +16.1% |
| 営業利益 | 345.18億円 | 203.36億円 | +69.7% |
| 営業利益率 | 20.6% | 14.1% | +6.5pt |
| 税引前四半期利益 | 346.64億円 | 216.70億円 | +60.0% |
| 親会社の所有者に帰属する四半期利益 | 194.31億円 | 117.32億円 | +65.6% |
| EPS(基本的1株当たり四半期利益) | 117.93円 | 71.49円 | +46.44円 |
数字の動き
第3四半期累計の売上収益は1,672.91億円となり、前年同期の1,440.67億円から16.1%増加しました。会社は、Marketplaceでプロダクトのコア体験強化を基盤にお客さまの定着が進み、アクティブ率も継続的に向上したことに加え、エンタメ・ホビーカテゴリーも好調に推移したと説明しています。Fintechについては、「メルカリ」内外での決済が拡大したことに加え、独自のAI与信モデルを活かした段階的な与信枠拡張が寄与し、債権残高が前年同期比45.0%増の3,281億円に伸長したと説明しています。
営業利益は345.18億円となり、前年同期の203.36億円から69.7%増加しました。売上収益の増加率(+16.1%)を営業利益の増加率(+69.7%)が大きく上回った結果、営業利益率は前年同期の14.1%から20.6%へ6.5pt上昇しています。利益面の背景として、会社はMarketplaceについて、売上収益の増加に加え、下期の投資が4Qに集中し、3Qでは大型の投資がなかったことで、高い収益性を継続したと説明しています。また、連結3Q単独のコア営業利益についても、好調なトップライン成長に加え、3Qでは大型のマーケティング施策がなかったことなどを背景に、146億円を計上したと説明しています。あわせて会社は、4QはFY2027.6以降の成長に向けた投資を強化する計画であり、コア営業利益は前四半期比で大幅な減益を見込むとしています。
税引前四半期利益は346.64億円(前年同期比+60.0%)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は194.31億円(同+65.6%)となりました。EPS(基本的1株当たり四半期利益)は117.93円で、前年同期の71.49円から46.44円増加しています。なお、キャッシュ・フローでは、営業活動によるキャッシュ・フローが△192.59億円となりました。会社の開示によると、これは税引前四半期利益34,664百万円に対し、営業債権及びその他の債権の増加額82,325百万円や金銭の信託の増加額53,500百万円などが影響したものです。
公認会計士の視点
今回の決算で最も注意して見たいのは、利益率の上昇をどこまで「構造的な収益力改善」と読むかです。
第3四半期累計では、売上収益が前年同期比16.1%増だったのに対し、営業利益は69.7%増となりました。その結果、営業利益率は前年同期の14.1%から20.6%へ上昇しています。さらにMarketplaceを見ると、3Q単独のコア営業利益率は40%に達し、前年同期から13ppts改善しています。表面上は、トップラインの伸び以上に利益が大きく伸びた決算です。
ただし、この40%という利益率をそのまま巡航速度と見るのは早いと考えます。会社は、3Qでは大型のマーケティング施策がなく、下期の投資が4Qに集中していると説明しています。また、4QはFY2027.6以降の成長に向けた投資を強化するため、コア営業利益は前四半期比で大幅な減益を見込むとも説明しています。つまり、3Qの高い利益率には、事業の強さだけでなく、費用計上のタイミングも一定程度含まれていると見るべきです。
この点は、通期予想から逆算しても確認できます。会社は通期のコア営業利益予想を400億円以上へ再上方修正しました。一方、第3四半期累計のコア営業利益は348.76億円です。仮に通期予想の下限(400億円)に対して単純に差し引くと、通期下限までの残りは約51億円となり、3Q単独のコア営業利益146億円を下回る計算になります。もっとも、通期予想は「400億円以上」という下限を示すものであり、4Qの利益水準を一意に定めるものではありません。それでも、上方修正と「4Qはコア営業利益が前四半期比で大幅な減益」という会社説明は矛盾せず、3Qまでの上振れを取り込みながら4Qに計画的な投資を振り向ける構図と読むのが自然です。
一方で、3Qの利益率改善を「投資が少なかっただけ」と片付けるのも適切ではありません。Marketplaceでは、プロダクトのコア体験強化を基盤にお客さまの定着が進み、アクティブ率も継続的に向上したと会社は説明しています。売上収益そのものも伸びており、トップラインの成長が利益を押し上げた面もあります。したがって今回の利益率改善は、「構造的なトップライン成長」と「4Qへの投資集中による費用タイミング」の双方が重なったものとして読むのが妥当だと考えます。
外部からは、利益率改善のうち何ptが構造要因で、何ptが一時的な費用タイミングによるものかを厳密に分解することはできません。広告宣伝費やキャンペーン費用の四半期ごとの内訳までは、開示資料だけでは十分に追えないためです。したがって、3Qの利益率そのものよりも、4Qの投資後にどの程度の売上成長が残るのか、そしてFY2027.6以降の利益率がどの水準に落ち着くのかを確認する必要があります。
もう一つ、会計士の視点で見ておきたいのがFintechのBSとキャッシュ・フローです。
Fintechでは、債権残高が前年同期比45.0%増の3,281億円に拡大し、回収率は99.4%と高い水準を維持しています。一方、連結の営業活動によるキャッシュ・フローは192.59億円のマイナスとなりました。営業債権及びその他の債権の増加額82,325百万円、金銭の信託の増加額53,500百万円などが大きく影響しています。
ここで重要なのは、営業CFのマイナスをただちに資金繰り悪化と読まないことです。与信事業では、事業が伸びるほど債権が積み上がります。実際、当第3四半期累計でも、営業債権及びその他の債権の増加額82,325百万円が営業CFを押し下げる大きな要因の一つとなっており、これは主に与信関連債権の増加として説明されています。その資金を借入や債権流動化などで調達するため、PLでは利益が出ていても、営業CFがマイナスに振れることがあります。これは与信事業の成長局面では起こり得る動きです。
実際、会社は与信債権の流動化を活用しており、ノンリコース形式での調達を中心に進める方針も示しています。ノンリコース形式は、債権の回収金のみを返済原資とし、メルカリに返済義務が遡及しない資金調達手法と説明されています。したがって、Fintechについては、PL上の増益だけでなく、債権残高、回収率、調達構造をセットで見る必要があります。
ただし、与信残高の拡大は信用リスクの蓄積でもあります。回収率99.4%は高い水準ですが、過去の回収実績に基づく指標であり、今後の景気環境や与信枠拡張のペースによって貸倒の出方が変わる可能性はあります。四半期開示では延滞率やビンテージ別の回収状況までは十分に読み取れないため、今後も債権残高の伸びと回収率の関係を継続して確認する必要があります。
注目点・今後の論点
次の決算以降で確認したい点を、3つに整理します。
第一に、4Qの投資後に残る収益性です。会社は4QにFY2027.6以降の成長に向けた投資を強化し、コア営業利益は前四半期比で大幅な減益を見込むとしています。3Qの高い利益率のうち、どれだけが投資後にも残るのか。4Qの着地と、その先の利益率水準が、3Qの収益力を事後的に検証する材料になります。
第二に、Marketplaceのトップライン成長の持続性です。3Q単独では、GMVがYoY+16%、売上収益がYoY+20%と高い伸びを示しました。会社はコア体験強化による定着・アクティブ率の向上や、エンタメ・ホビーカテゴリーの好調、越境取引の拡大を背景に挙げています。これらの成長要因が一過性のものか、継続的な基盤として定着するのかを、次の四半期以降のGMVと売上収益の伸びで見ていきたい点です。
第三に、Fintechの債権残高と回収率の関係です。債権残高はYoY+45.0%の3,281億円、回収率は99.4%と、規模の拡大と質の維持を両立しています。与信枠の拡張が進むなかで、この回収率が維持されるのか。次に確認したいのは、債権残高の伸びに対して回収率がどう推移するか、という与信の質の動向です。
まとめ
2026年6月期第3四半期のメルカリは、増収率を上回る増益で、営業利益率が20.6%まで上昇した決算でした。ただし、この高い利益率には、トップラインの構造的な成長と、4Qへの投資集中による費用タイミングの双方が含まれていると見るのが妥当です。
会社は通期予想を再上方修正する一方、4Qはコア営業利益が前四半期比で大幅な減益になると説明しています。3Qの利益率をそのまま巡航速度と読むのではなく、4Qの投資後に残る収益性と、FintechのBS・キャッシュ・フローの動きを分けて確認することが、この決算を読むうえでの要点になります。利益率の改善は収益性向上を示す材料を含みますが、その持続性は次の四半期以降で検証していく必要があります。
出典:株式会社メルカリ 2026年6月期 第3四半期決算短信、2026年6月期 第3四半期決算説明資料
※本記事は、公表資料に基づく客観的な情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。詳しくは免責事項をご確認ください。

