ソフトバンクグループの2026年3月期は、売上高7兆7,986億円(前期比+7.7%)、親会社の所有者に帰属する純利益5兆22億円(同+333.7%)と、大幅な増収増益となりました。
ただし、この利益の中心は、売上高の増加そのものではなく、OpenAI関連を中心とする投資損益にあります。本記事では、この5兆円超の純利益を、通常の事業会社の「稼ぐ力」と同じ感覚で読んでよいのかを、公認会計士の視点から考えます。
業績サマリー
| 項目 | 当期(2026年3月期) | 前期(2025年3月期) | 前期比・増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 7兆7,986億円 | 7兆2,437億円 | +7.7% |
| 税引前利益 | 6兆1,349億円 | 1兆7,047億円 | +259.9% |
| 親会社の所有者に帰属する純利益 | 5兆22億円 | 1兆1,533億円 | +333.7% |
| 基本的1株当たり当期利益(EPS) | 873.51円 | 195.20円 | 参考・計算値 約+347.5% |
| 投資損益合計 | 7兆2,864億円 | 3兆7,011億円 | +96.9% |
| 参考:営業活動によるキャッシュ・フロー | △4,288億円 | +2,035億円 | △6,324億円 |
数値は決算短信(連結)に基づきます。金額は億円未満を切り捨てて表示しています(決算短信は百万円単位)。EPSの増減率は決算短信に記載された値ではなく計算値(参考)であり、当社は2026年1月1日付で普通株式1株を4株に分割しているため、前期EPSは分割を遡及した数値です。
数字の動き
売上高は7兆7,986億円(前期比+7.7%)となりました。会社は、ソフトバンク事業とAIコンピューティング事業がいずれも増収となったことを増収要因として説明しています。もっとも、当期の利益急増は売上高の伸びとは別の次元で生じており、売上の増加率(+7.7%)と税引前利益の増加率(+259.9%)の差は、利益急増が売上増だけでは説明できないことを示しています。
税引前利益は6兆1,349億円(前期比+259.9%)、親会社の所有者に帰属する純利益は5兆22億円(同+333.7%)と急増しました。その主因は投資損益合計7兆2,864億円(前期比+96.9%)です。内訳は、SVF事業の投資利益6兆6,386億円、持株会社投資事業の投資利益2,181億円などで、SVF事業の利益は前期(3,875億円)から大きく拡大しました。とりわけSVF2では、主にOpenAIへの出資に係る投資利益6兆4,655億円を計上したと説明されています。これに持株会社投資事業のOpenAIフォワード契約に係る投資利益2,649億円を加えると、OpenAI出資関連の投資利益は合計で約6兆7,304億円(439億米ドル)となります。
ただし、これらの投資利益の多くはFVTPL(純損益を通じて公正価値で測定する金融資産)の評価損益を含んでおり、利益額そのものが同額のキャッシュ流入を意味するわけではありません。実際、営業活動によるキャッシュ・フローは△4,288億円と前期(+2,035億円)から流出に転じています。会社は、SVFの投資の取得による支出5兆1,061億円(その主な内容はSVF2からOpenAIへの335.2億米ドルの追加出資)等により、投資活動によるキャッシュ・フローが△4兆5,071億円の支出超となったと説明しています。利益とキャッシュ・フローの動きは、当期において一致していません。なお税引前利益の構成要素としては、販売費及び一般管理費4兆209億円(前期比+9,965億円)、財務費用7,718億円(同+1,902億円)、為替差損2,710億円の計上もありました。
公認会計士の視点
今回の決算で目を引くのは純利益5兆22億円という規模ですが、会計士として注目したいのは、その金額よりも中身の方です。
当期の利益を大きく押し上げたのは、通常の事業会社における商品・サービス販売から生じる利益というより、OpenAI関連を中心とする投資損益でした。決算短信で確認できるOpenAI関連の投資利益は、合計で約6兆7,304億円となります。これは純利益5兆22億円を上回る規模であり、当期の利益がどこから生まれたのかを端的に表しています。
ここで押さえておきたいのは、この投資利益が、通常の事業会社が商品やサービスを販売して得る営業利益とは性質を異にする点です。SVF2が保有するOpenAI株式はFVTPL(純損益を通じて公正価値で測定する金融資産)に分類され、公正価値の変動額が投資損益として連結損益計算書に計上されます。つまり、事業収益力と評価益は分けて読む必要があります。
この性質は、キャッシュ・フローにも表れています。純利益5兆円超に対し、営業活動によるキャッシュ・フローは△4,288億円、投資活動によるキャッシュ・フローは△4兆5,071億円でした。利益額そのものが、同額のキャッシュ流入を意味するわけではありません。
一方で、評価益だからといって無意味と切り捨てるのも適切ではありません。会社は、SVFの投資先についてIFRS第13号、SBIA Global Valuation Policy、IPEVガイドライン等に基づき、毎四半期末に公正価値を算定していると説明しています。OpenAI株式の当期末残高は12兆7,255億円(796億米ドル)まで増加し、当期の公正価値増加分は4兆9,286億円(319億米ドル)とされています。一定のルールに沿って測定された評価額であり、根拠のない数字ではありません。
以上を踏まえると、今回の決算は「利益が大きいから稼ぐ力が大きい」と単純に読むよりも、投資持株会社として保有資産の公正価値が大きく増加し、それが損益に反映された決算と読む方が、実態に近いと考えます。
なお、開示資料から確認できるのは、OpenAI関連の投資利益、公正価値増加額、各キャッシュ・フローの動きまでです。この評価益が将来いつ、どの程度の金額で実現するかは、資料上は確認できません。事業収益力と評価益、そして利益とキャッシュを分けて読むことが、この決算を理解する出発点になります。
注目点・今後の論点
次の決算以降で確認したい論点を、3つ挙げます。
第一に、OpenAIへの集中度です。
SVFの投資(FVTPL)の帳簿価額23兆4,957億円のうち、OpenAI株式は12兆7,255億円(796億米ドル)と、大きな割合を占めています。また、会社は2026年2月にOpenAIへ新たに300億米ドルの追加出資をコミットしており、2026年4月には第1トランシェ100億米ドルの出資が完了したと開示しています。
当期の利益、保有資産、今後の投資予定のいずれを見ても、OpenAIの重要性は高まっています。今後は、この集中度がどのように推移するかが一つの着眼点になります。
第二に、評価益の実現とキャッシュ化です。
当期の利益を支えたOpenAI関連の投資利益は、公正価値評価による損益を含んでいます。これが将来、売却や上場等を通じて実際のキャッシュとして実現するのか、あるいは評価額が変動するのかは、現時点の開示では確認できません。
今後の決算では、投資損益だけでなく、投資の実現状況とキャッシュ・フローの動きを合わせて確認する必要があります。
第三に、資金調達と財務の状況です。
当期はOpenAI出資やAmpere買収のための借入が実行され、ソフトバンクグループ単体の有利子負債は12兆3,168億円(前期末比+3兆7,315億円)に増加しました。会社は後発事象として、総借入限度額400億米ドルのブリッジファシリティ契約の締結も開示しています。
大型投資を継続するうえで、資金調達と投資回収のバランスがどう保たれるかは、今後確認したい論点です。
なお、来期(2027年3月期)の連結業績予想について、会社は「未確定な要素が多く、連結業績を見通すことが困難なため、予想の公表を控えている」と説明しています。
まとめ
ソフトバンクグループの2026年3月期は、親会社の所有者に帰属する純利益が5兆22億円となる大幅増益の決算でした。
ただし、その中身はOpenAI関連を中心とする投資損益に大きく支えられており、公正価値評価による利益が重要な位置を占めています。
重要なのは、この利益を通常の事業会社の収益力と同じものとして読むのではなく、投資持株会社として保有資産の価値が大きく増加し、それが損益に反映された決算として理解することです。今後は、OpenAIへの集中度、評価益の実現とキャッシュ化、そして資金調達と投資回収のバランスを確認していく必要があります。
出典:ソフトバンクグループ株式会社「2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」(2026年5月13日)、「2026年3月期 投資家向け説明会」(2026年5月13日)
※本記事は、公表資料に基づく客観的な情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。詳しくは免責事項をご確認ください。

