ブリヂストンの2026年12月期第1四半期は、売上収益が1兆1,134億円(前年同期比+5.2%)、営業利益が1,258億円(同+41.7%)と、増収かつ大幅な営業増益になりました。継続事業ベースの数値です。
もっとも、営業利益の4割を超える伸びを、すべて当期の事業活動による増益と読むと、実態を取り違えるおそれがあります。会社が経営指標として採用する調整後営業利益の伸びは+9.7%で、IFRS上の営業利益の伸びとは差があるためです。本稿では、この2つの伸び率の差がどこから生じているかを分解したうえで、税引前利益と親会社帰属利益の伸び率の差についても確認します。
業績サマリー
| 項目 | 当期(2026年12月期1Q) | 前年同期(2025年12月期1Q) | 前年同期比・増減 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1,113,427百万円 | 1,058,149百万円 | +5.2% |
| 営業利益 | 125,802百万円 | 88,766百万円 | +41.7% |
| 営業利益率 | 11.3% | 8.4% | +2.9pt |
| 税引前四半期利益 | 126,287百万円 | 85,898百万円 | +47.0% |
| 親会社の所有者に帰属する四半期利益 | 91,925百万円 | 75,695百万円 | +21.4% |
| EPS(基本的1株当たり四半期利益・継続事業) | 72.23円 | 55.44円 | +16.79円 |
数字の動き
第1四半期の売上収益は1兆1,134億円(前年同期比+5.2%)、営業利益は1,258億円(同+41.7%)となりました。いずれも継続事業ベースの数値です。
売上収益について、会社はセグメント別の説明で、日本では為替円安に加え、市販用タイヤの販売増や売値・MIXの改善が増収増益に寄与したとしています。欧州・中近東・アフリカでは、欧州における高インチタイヤを中心としたプレミアムタイヤの増販が継続したと説明しています。
営業利益は88,766百万円から125,802百万円へ、37,036百万円増加しました。この増加額は、会社が経営指標として採用する調整後営業利益の増加10,778百万円、調整項目(収益)の増加4,512百万円、調整項目(費用)の減少21,746百万円の3つに分けられます。
3つの増益要素のうち、金額が最も大きかったのは調整項目(費用)の減少です。調整項目(費用)は前年同期の23,964百万円から2,218百万円へ減少しました。その中心である事業・工場再編費用も、23,384百万円から1,880百万円へ減少しています。
税引前四半期利益は126,287百万円(前年同期比+47.0%)となりました。法人所得税費用は8,300百万円から31,997百万円へ増加し、継続事業からの四半期利益は94,290百万円となっています。継続事業ベースの親会社の所有者に帰属する四半期利益は91,925百万円(同+21.4%)で、税引前四半期利益と親会社帰属利益では増加率に差がみられます。
セグメント別の調整後営業利益は、日本が425億円から537億円へ増加し、欧州・中近東・アフリカも91億円から190億円へ増加しました。一方、アジア・大洋州・インド・中国は146億円から135億円へ、米州は398億円から379億円へ減少しています。
米州について、会社は、北米では寒波の影響もあって需要が減速した一方、市販用新商品やマルチブランド戦略が寄与し、乗用車用・トラック・バス用とも市場需要を上回る販売となったと説明しています。
キャッシュ・フロー面では、営業活動によるキャッシュ・フローが169,876百万円から190,795百万円へ増加しました。億円未満を切り捨てると、1,698億円から1,907億円への増加です。
公認会計士の視点
今回の決算で最も注意したいのは、営業利益の41.7%増と、調整後営業利益の9.7%増を同じ意味の増益として扱わないことです。
IFRS上の営業利益は88,766百万円から125,802百万円へ、37,036百万円増加しました。この増加額を分解すると、調整後営業利益の増加が10,778百万円、調整項目(収益)の増加が4,512百万円、調整項目(費用)の減少が21,746百万円です。営業利益増加額の約59%は、調整項目(費用)が減少したことによる計算になります。
調整項目(費用)の中心は、海外のタイヤ工場を中心とする事業・工場再編費用です。この費用は前年同期の23,384百万円から当期は1,880百万円へ減少しました。したがって、営業利益の41.7%増には、当期の事業活動による増益だけでなく、前年同期に計上された多額の再編費用が縮小した影響が大きく含まれています。
一方で、営業利益の増加をすべて前年の反動と評価するのも適切ではありません。会社が採用する調整後営業利益も111,412百万円から122,190百万円へ9.7%増加し、利益率は10.5%から11.0%へ上昇しています。営業利益の増加幅ほどではないものの、調整項目を除いた利益にも改善がみられます。
調整後営業利益の増加108億円のうち、為替影響は50億円、為替を除く増加は58億円でした。原材料要因、MIX、売値がプラスに寄与した一方、数量減少や米国関税を含む「その他」が減益要因となっています。このため、増益は円安だけによるものではありませんが、複数の増減要因が相殺された結果でもあります。これらをどこまで恒常的な収益力の改善とみるかは、今回の開示だけでは一義的に判断できません。
再編費用の減少は、損益計算書上では明確な改善要因です。ただし、1四半期の費用減少だけで再編が完了した、あるいは同様の費用が今後発生しないと判断することはできません。今後は、再編費用の減少そのものよりも、再編によって調整後営業利益や利益率が継続的に改善するかを見る必要があります。
会社は欧州・中近東・アフリカについて、プレミアムタイヤの増販と再編・再構築効果により、調整後営業利益が91億円から190億円へ増加したと説明しています。一方、アジア・大洋州・インド・中国では再編・再構築効果が継続したとしながらも、調整後営業利益は146億円から135億円へ減少しています。会社は、前年の一過性項目を除けば増益と説明しており、再編効果の表れ方は地域によって異なります。
もう一つ確認したいのが、税引前利益と親会社帰属利益の伸び率の差です。税引前四半期利益は85,898百万円から126,287百万円へ40,389百万円増加しましたが、法人所得税費用も8,300百万円から31,997百万円へ23,697百万円増加しています。法人所得税費用の増加額23,697百万円は、税引前四半期利益の増加額40,389百万円の約59%に相当します。この税負担の増加もあり、税引前四半期利益と親会社帰属利益では増加率に差が生じています。
計算上の税負担率は9.7%から25.3%へ上昇しています。その結果、税引前四半期利益が47.0%増加したのに対し、継続事業ベースの親会社帰属利益の増加率は21.4%となりました。ただし、前年同期の税負担率が低かった理由について、今回の資料には税率差異の内訳が示されていません。したがって、「当期に税率が正常化した」「25%前後が今後の平常水準である」とまでは判断できません。
今回の決算は、単純に「営業利益が4割増えた決算」と整理するだけでは不十分です。調整項目を除いた利益も増加している一方、IFRS上の営業利益の伸びは、前年同期の再編費用が減少したことで大きく増幅されています。この二つを分けて捉えることが、収益力の変化を読み違えないためのポイントです。
注目点・今後の論点
次の決算で確認したい点を、いくつか挙げておきます。
1つ目は、再編効果の継続性です。前年同期に多額だった事業・工場再編費用は当期に大きく縮小しましたが、これは損益計算書上の費用減少にとどまります。再編によって調整後営業利益や利益率が継続的に改善していくかどうかは、費用の減少そのものとは分けて見る必要があります。地域別でも、欧州・中近東・アフリカでは再編・再構築効果による増益が説明される一方、アジア・大洋州・インド・中国では調整後営業利益が減少しており、効果の表れ方には差があります。
2つ目は、税負担率です。私が次回以降の開示で確認したいのは、前年同期の低い税負担率が一時的な税効果によるものだったのか、また当期の25.3%が今後も継続する水準なのかという点です。今回の資料には税率差異の内訳が示されていないため、現時点では判断できません。
3つ目は、通期に向けたコスト面の外部環境です。会社は通期業績見通しを2月公表値から変更していませんが、米国関税については2月想定のグロス約550億円/年間から大きな変更はないと説明しています。また、中東情勢に伴うコストインフレについて、原油価格が1バレル90米ドルで年内継続した場合、2月公表の通期予想との比較でグロス約700億円の影響になると試算しています。いずれもグロス影響であり、対策実施後の損益影響や業績予想の修正額を示すものではないため、単純に合算せず確認する必要があります。原材料コストの上昇は主に下期に見込まれており、今後の実績にどの程度表れるかが焦点になります。
まとめ
2026年12月期第1四半期は、増収と大幅な営業増益になりましたが、営業利益の+41.7%には前年同期の再編費用が縮小した影響が大きく含まれており、会社が採用する調整後営業利益の伸びは+9.7%でした。この2つを分けて捉えることが、収益力の変化を読み違えないためのポイントになります。
また、税引前利益が+47.0%伸びた一方で、継続事業ベースの親会社帰属利益の伸びは+21.4%にとどまりました。この差には税負担率の上昇が関わっており、営業面の変化とは切り分けて確認する必要があります。通期に向けては、中東情勢や原材料コスト、米国関税といった外部環境の影響が、下期以降にどう表れるかが次の焦点です。
出典:株式会社ブリヂストン 2026年12月期 第1四半期決算短信、2026年第1四半期 決算説明会資料
※本記事は、公表資料に基づく客観的な情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。詳しくは免責事項をご確認ください。

